11:聖ヒラリオン修道院/ テル・ウンム・アメル
テル・ウンム・アメルは、パレスチナのガザ地区。デイル・アル・バラーフ県にあるヌセイラト難民キャンプにある考古学遺跡です。
ワディ・ガゼ河口南に位置する砂丘地帯に位置しています。
考古学遺跡の面積は、約4,6000平方フィートにも及びます。
1999年に地元の考古学者によって発見され、4世紀から8世紀にかけてのキリスト教の遺物が収蔵されています。
この遺跡には聖ヒラリオン修道院をはじめとした宗教的建築物(教会や回廊等)、
そして修道士の生活に必要な全ての建物(雑居室、寮など)があり、
更には、おそらく巡礼者が利用したであろう、ホテルや浴場が発見されています。
聖ヒラリオン修道院
この修道院は、修道制の父と言われるヒラリオンによって340年頃に設立されました。
ヒラリオンはアレクサンドリアでキリスト教に改宗し、
その後、聖アントニウスに感化され、最初はエジプトで、その後は故郷で隠遁生活を送りました。
ヒラリオンが63歳になる頃には、修道院は大きくなり、多くの来訪者が訪れるようになりました。
聖ヒラリオン修道院は、後期ローマ時代からウマイヤ朝時代までの4世紀以上に渡るものであり
5つの教会、浴場と聖域の複合施設、幾何学的なモザイク、広大な地下室が特長です。
危機に瀕する遺産
聖ヒラリオン修道院、テル・ウンム・アメルは、
ガザという土地柄、資材や機材の不足、さらにはイスラエルの侵攻も始まったことで
2024年に緊急案件として、世界遺産登録と同時に危機遺産に指定されました。
登録基準
(ii)建築、科学技術、記念碑、都市計画、景観設計の発展に重要な影響を与えた、ある期間にわたる価値観の交流又はある文化圏内での価値観の交流を示すものである。
(iii)現存するか消滅しているかにかかわらず、ある文化的伝統又は文明の存在を伝承する物証として無二の存在(少なくとも希有な存在)である。
(iv)歴史上の重要な段階を物語る建築物、その集合体、科学技術の集合体、あるいは景観を代表する顕著な見本である。
この遺跡は、4世紀建立という中東では最も古いもののうちの一つであり
この地域に修道院という概念を広めた存在であり
多数の文化や宗教、経済が交流する中心地でもありました。
テル・ウンム・アムルには、世界でも3番目に古いキリスト教教会である「聖ポルフィリウス教会」存在していましたが
2023年の空爆により破壊され、他の遺構も破壊されてしまった為
唯一残る、聖ヒラリオン修道院のみの世界遺産登録となりました。
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